›11 08, 2006

ライブハウスを出でよ(下)

Posted by miya-aki at 14:53 / Category: miya-aki , 考察 , Music / 0 Comments

前回言いたかった事をまとめると、要するにこのバンド業界のおもんなさは、全てシステム化された土台の上でしか転がっていない事が原因じゃないか、ということだ。
みんな用意されたレールの上を渡ることしか考えず、なおかつそれが環状線であることに誰も気づかない。

このシステムの中心に位置しているだろうライブハウス、全てのライブハウスがそうだとは言わないが、これがまたほんましょーもない。
まず数が多い。
このライブハウスのほとんどは、アマチュアやインディーズを出演対象とした小規模のハコなのだ。
この有象無象のライブハウスの主な収入源は、出演者から徴収する「ノルマ」である。

どういうシステムか簡単に説明しよう。
あるバンドがライブハウスのブッキングによってあるイベントに出演が決まったとしよう。
その時にバンドに課せられるのがチケット売り上げのノルマである。
バンドはそのノルマを達成しなければならない。
ノルマを達成できなければ、差し引きで足りない分を自腹で払わなければならないのだ。
その日のチケットの前売りの代金が1500円で、その日のノルマが10枚だったとすれば、バンドは1500円*10=15000円をライブハウス側に保障すると言うわけだ。
じゃあ10枚以上売り上げれば自分らの懐にお金が入るんですね、と思いがちだがここにも落とし穴がある。
ノルマ以上の売り上げは100%バックではない場合がほとんどで、ノルマとバック発生までの枚数に差があるなんてこともざらだ。
チャージ分だけでは足らないと言うわけだ。

このシステムは、はなっからバンドに「客なんて呼べないんでしょ?」って言ってるのと同じで、完全にバンドを商売の対象としてしか見ていないのではないか?
もちろんライブハウスも商売でやっているのでこれはあながち間違いではない。
バンドが金を保障しているのだから、ライブハウスからみればバンドはある意味客であるという図式が成り立つ。
しかし、金を払っているのにもかかわらず「ノルマ未達成」というこの申し訳無ささは一体なんだ?
さらに何でブッキングマネージャーにうんちくたれられなければならないのか?
バンドがあなた達にお金を保障してるからこそ、あなた達は食えているんでしょ?
なんかおかしくない?
お金取って、わけ分からんブッキングして、なおかつ偉そうなのは何でなん?
そこまで偉そうな態度取るからには、あなた達もさぞかしお客を呼ぶ努力をしてるんですよね?
さぞかしその日のイベントに自信があるんですよね??

何もしねえんだったら初めから「機材使用料」という名目で金を徴収してれば良いのに。
何すか「ノルマ」って。
っていう事をキャリア20年以上、海外での活動現在も著しい、ジムオルークとは飲み友達だという某酸母寺の先輩方に聞いてみたところ、

「あー、あれは10年くらい前に東京の何とかってハコが始めたらしいよ。
それがすげえおいしいってんでそこらじゅうのハコが真似し始めたんやね。
これっておかしいよな、立場完全に逆やし。
俺らの若い頃はそんなん無かったけど、チケット売り上げはその日のギャラにも関係してくるし、俺ら必死でチケット売ったもんやけどなー。
あ、そうそう。
ガーリックボーイズのラリーって知ってる?
あの頃俺あいつとバンドやっててんけど、あいつギター上手かったわー。」

とのこと…。

まあそもそもこのシステムにへいこら乗っかる奴らがいるからこそ、こういう商売が成り立つんやけどね。
そりゃハコの数も増えるわけですよ。
まあ確かに楽やわな。
金払うだけで、後はなーんも考えなくて良い。
ステージさえ上がってりゃミュージシャン気取れるしね。

でもさあ。

ハコのブッキングでライブ決まって、興味もないバンドとタイバンで、客も一人も入らず、ブッキングマネージャーの営業トークにおだてられ、金払ってお疲れ様。
その日に一体何の意味があんの?
君はその日にライブをホントにやりたかったの?
大してやりたくも無いのに、営業にかけられるままはいはい金払って、ほんとバカなんじゃないの?
バカだからライブハウスになめられるんじゃないの?

もっと自分達でイベント組めよ。
ライブをしたい!と思ったその時に。
ハコを借り切って、自分達で呼ぶバンド、集客、ギャラ、打ち上げ、その他もろもろ考えて、そのほうが意味あるでしょう?
タイバン同士意味のある交流が出来るでしょう?

バカ相手に商売するからライブハウスもバカになる。
バカから金をかすめとることしか考えず、自分の足を使って売り上げを上げる努力を何もしないから、結局経営に行き詰る。
それも全部人のせい。
金づるのバンドを他のハコに取られただの、客を取られただの、あのハコのスタッフがムカつくだの、あーだこーだ文句ばっかり。
数だけ増えくさってお互い潰しあってみんな共倒れ。
この繰り返し。
くだらない。
他のハコと同じ事しかやってないのに、どうして自分とこだけ生き残れると思うのよ?

ほんとしょーもない。
みんなやってること一緒。
ハコもバンドも。

音楽で食っていく?
古い。
東京進出?
古い古い。

「地元も仕切れず何歌う気だ」 by BOSS THE MC
ネイティブでもないのに英語で歌う”オリジナル(風)”ミーハーバンド。
音に感情をのせる事の出来ないエセミュージシャン。
ほら、CD売れないだろ?
受け手はみんな心のどこかで気付いてんだよ、中身の無さに。

バカを相手に大もうけのインディーレーベル。
既得利権にしがみつき、音楽を冒涜し続けるレコード会社、広告代理店、JASRAC。
必要ない。

全てのバンドマン達に言おう。
目を覚ませ。
自ら何も成してないことに気付き、それを恥じろ。

自らを表現できる場所はライブハウスだけじゃない。
何かを伝えるのに、そんな立派な設備が必要か?
さあ考えろ。


「ライブハウスを出でよ」


ほら、空はこんなにも広大だ。

›11 06, 2006

ライブハウスを出でよ(上)

Posted by miya-aki at 14:48 / Category: miya-aki , 考察 , Music / 0 Comments

こんばんは。
ukwai.氏がこのエントリーに寄せてくださったコメント、とてもナイスな考察を挙げてはると思う。
なので今日はその返答もかねて「バンド」について書きます。

個人的に今のバンドシーン、すげえしょーもないと思う。
学生時代から「あれ?」と思うことはあったのだが、業界で働くようになってその思いはさらに強くなった。
なぜこんなしょーもないのか。

まず挙げられるのは「バンド」を取り巻く環境があまりにも商業的にシステム化され過ぎたことだと思う。
80年代後半から90年代にかけての第二次バンドブームの頃、様々な会社がこぞってライブハウスやリハーサルスタジオをたちあげた。
この流れはバンドブームに拍車をかけ、楽器とメンバーさえ揃えば誰でもバンドを始められる、という土台を作った。
金さえ払えばなんでも揃うし、めんどくさいことは誰かがやってくれる。
初心者・アマチュアは増大、誰もアンプやマイク、ミキサーを買わなくなり、結果、機材の使い方もろくに分からない機材レンタルミュージシャンが登場することになった。
ゲインとボリュームの違いも分からない自称ギタリスト達も多く、そんな彼らはukwai.氏も挙げていたローランド「JC-120」を愛用する。
ボリュームを上げるだけで音が出るからだ。
楽器機材としては画期的過ぎるが、おそらくゲイン固定なだけだと思われる。
要するにCDプレイヤーなどをつなぐアンプと仕組みはほぼ同じってこと。
なので、ボリュームを上げても歪まない。
そして歪みをコンパクトエフェクターで作ろうとする。
オーバードライブとディストーションの違いも分からずに。
コレに慣れてしまったギタリストは、当然JCしか使えなくなる。

ここで付け足しておきたいのだけど、同じレンタルミュージシャンでも「どんな機材でも使いこなせますよ」というのと「ジャズコ無いと困りますぅ」というのとでは大きく違う。
あえてJCを使っているのと、JCしか使えないのとでは全然違うということを言っておきたい。
俺が言及しているのは「後者」が増えすぎているということだ。

ゲインの意味も分からないギタリストは時々意味不明な行動を取る。
「うわーハウってるわー」
と言いながらなぜかボリュームを下げる。
ここまではまだ良い。
「うわーハウってるわー。シールド悪いんじゃね?」
と言いながらシールドを替える。
これはもう笑うしかない。
どこの世界にそんなシールドがあると言うのか。

そもそもこんな猫も杓子も歪みなさい的な音楽シーンにも問題がある。
ある程度歪ませているということは、コンプレッサーをバキバキにかけているのと同じであり、これは楽器の演奏の上達を大きく阻害すると思う。
実際、何でこんなに下手なんだと怒りたくなるようなアマチュアが、平気な顔で連日舞台に上がっている。
オリジナルやる前にまずコピーを100曲やってこい!と言いたい。
アマチュアだろうが趣味でやってようが、客から金取ってるんならせめて一所懸命やってください。
情熱を魅せてください。
楽しければいいじゃんって、それ友達同士じゃないと通用しないよ。

機材の扱い方、仕組みを分かってないのはボーカルにも言える。
まずマイクの持ち方。
マイクのグリル部分(先っぽの丸いネットの部分ね)を握りこむやつが多すぎる。
もともとSM58(ボーカルマイクで使われる最もスタンダードな機種)はハウリングしにくい構造をグリル部分に採用しているのに、そこを握りこんでしまっては元も子も無い。
そりゃハウりますよ。
その持ち方はカッコいいの?テレビで誰かやってたん??
あと、フットモニターに平気でマイクを向けるやつ。
だからハウるっちゅーのに!!
ああああああもうっ!!
ほんまにいい声聴かせたかったら、マイクをちゃんと持ってマイクに向かってまっすぐ歌え!!
指向性ってもん知らんのか!?

次!
ベーシスト!
なんでD.I.通してるのか分かってる?
ラインから直で音出してんだから勝手にシールド抜くなぁ!!!
っていうかサンズアンプかませばいいと思ってるの?
それ、ほんまに必要??
D.I.の前にかませられると音作りにくいんですが…。

ほんでドラム!
しっかり叩け!!
アコースティック楽器の君にはコレしかいうことが無い。

機材の仕組みも分からないエセミュージシャンが、本当にリアルな音を出せるわけ無い。
表面だけの薄っぺらい音楽。
こんなもん芸術でもなんでもない。
努力も下積みも経験も無しで出来上がったもんなんか、俺は認めない。
こんな”自称”ミュージシャンを大量生産してきたのは、金さえ払えば機材もハコも何でも借りられるというクソッタレな土台を作った日本の音楽業界だ。
甘やかされて音楽をやってこれたお坊っちゃん、お嬢ちゃんたちはこのシステムにどっぷり浸かり、自分の頭で考えることをやめる。

「すいません…音出ないんですけど…。」
だから何やねん!?
俺のせいか!?
アンプから音が出ないんやったら、まず、シールドをつなぎ替え、ギターかシールドかエフェクターかアンプか、どこが悪いのか原因を自分で突き止めて、それでもらちがあかんかったらその旨を俺に伝えろ!
自分でできる範囲のことは自分でやらんかい!
アンプの使い方がわからんのやったら「使い方教えて」と言えよ!
俺は君の友達じゃないし、ましてやエスパーでもないねんからコミュニケーションにも頭使え!!

こういったお坊っちゃん、お嬢ちゃんたちはあげくの果てに、自分達のライブの出来の悪さをPAオペレーターのせいにしたり、機材のせいにしたり、はたまた照明のせいにしたりする。
自分達の努力、練習量の足りなさを棚に上げて。

このシステマティックな土台の中枢を担っているのは、なんと言っても「ライブハウス」だろう。
そしてこの十年で確立された凶悪なシステムが「ノルマ制」である。
これについては次回、大いに語ろうと思う。